日めくり栄養学

東大博士学生による結構まじめな栄養学

Acute sleep loss results in tissue-specific alterations in genome-wide DNA methylation state and metabolic fuel utilization in humans.(睡眠不足が引き起こす組織特異的なメチル化及び代謝状態の変化)

疫学研究では肥満や2型糖尿病のような現代病は慢性的に睡眠不足な人々に多く見られるということが報告されている。睡眠不足自体やこれによる概日リズムの乱れが骨格筋量の低下および脂肪細胞の増加などに影響しているだろうと言われている。大切なのはこういった疫学研究の結果を受けてそのブラックボックスを如何に分子レベルで解明していくだと思う。

 

スウェーデンのUppsala University の研究チームは1日の睡眠不足が及ぼす組織特異的な悪影響を調べた研究である。15人の健常者からランダムに睡眠時間を削り、翌朝バイオプシーと呼ばれる方法でが骨格筋と脂肪細胞の組織片を採取してDNAメチル化解析を行っている。DNAメチル化は遺伝子発現調節において極めて重要な機能を有している。睡眠不足によって概日リズムに関わる遺伝子発現量がエピジェネティックに制御されていることを示した。またこれらのDNAメチル化変動は脂肪細胞において特異的にみられることを確認し、それらの変動がさらに肥満や2型糖尿病を引き起こす代謝状態へと誘導していることを確認した。同時に骨格筋形成のタンパク質の分解も確認している。

食事や運動はDNAメチル化状態を変える要因であると考えられているが、やはりそれらと並んで、もしくはそれ以上に睡眠が与えるエピジェネティックな変化は我々の健康に大きな影響を与えているかもしれない。

 

やはり睡眠はしっかりとろう。