日めくり栄養学

東大博士学生による結構まじめな栄養学

メチオニン制限食の効能

メチオニンの代謝経路はOne carbon経路と呼ばれ、葉酸の代謝と共同して細胞増殖や核酸合成に関与する重要な反応経路であることが知られている。そのためアンチエイジングやがんの治療として本経路の関与が示唆され、メチオニン制限食の可能性が提唱されてい…

マイオカイン最初の発見

運動が生体機能の向上に寄与することはほとんど自明であるものの、根底にある分子メカニズムについては未だ未知のことが多い。マイオカインは筋肉から分泌される生理活性をもつ物質の総称である。 最も早く発見され、その機能が最も調べられているのがIL-6で…

妊娠中の運動による効用(Exercise during pregnancy protects offspring from obesity)

男性だからなのか、妊娠中の運動なんて言語道断であると思っていたが、軽くググってみただけでもしたほうが良いという意見は多くて驚いた。今日の論文は栄養とは関係ないが、妊娠中の運動が生まれてくる子供にとって大きなメリットがあるということを示した…

部屋を綺麗にして心も綺麗に、見た目も綺麗に(The Endocrine Society)

我々が全く気にしていないときににも無意識に身体にとって害な行動をとっているときがある。Duke Universityの研究チームが報告したのは、HouseDust(所謂部屋のほこり)に含まれる化合物が脂肪細胞の増殖を促進するというものだ。 先行研究では特定の化学物…

マーケティング目的の記載に注意(Detection of Gluten in Gluten-Free Labeled Restaurant Food)

ジョコビッチによって爆発的に広まったグルテンフリーは多くのレストランや食品の謳い文句になりつつある。人の中にはグルテンを消化することに対して過剰に反応したり消化できない人がいる、こういう人がグルテンをとると小腸粘膜機能がおかしくなる、実際…

ALSの原因解明に向けて最新技術が示唆するもの(Spatiotemporal dynamics of molecular pathology in amyotrophic lateral sclerosis)

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は脳、末梢神経からの指令を筋肉に伝える運動ニューロンが侵され筋肉を動かすことが困難になり、重症の場合は麻痺、死亡に至る場合もある難病である。知覚や自律神経が直接的に影響を受けることはないが、呼吸には運動ニューロンを…

見たい景色がある、なら野菜を食べよう(Dietary vitamin and carotenoid intake and risk of age-related cataract)

コンタクトやメガネが開発されなかったら毎日ゆがんだ世界を生きることになって幸福度が大きく下がっていたに違いない。僕は裸眼の視力が著しく悪い、テクノロジーには期待しているが、生きるうえで目が見える状態だけはキープしていきたい。目には、レンズ…

Vitamin Dの取りすぎの危険性(Three doses of vitamin D and cognitive outcomes in older women: a double-blind randomized controlled trial.)

アメリカでは4人に1人が認知症であることが報告されておりこれにかかる医療費はおおよそ31億円以上と言われている。そんな脳機能との関係性が謳われている栄養素がビタミンDである。一般的には骨の形成に必要な栄養素として知られており、太陽光(に含まれる…

サプリメントの摂取で精神的落ち込みは予防できない

論文ではないが、ヨーロッパのMooDFOOD projectと呼ばれる研究活動で、栄養サプリの摂取が精神病の改善につながるかどうかを調べている。各ビタミンやミネラルを含むサプリメントを精神的落ち込みを発症するリスクのある肥満体質の被験者を対象に大規模な実…

Acute sleep loss results in tissue-specific alterations in genome-wide DNA methylation state and metabolic fuel utilization in humans.(睡眠不足が引き起こす組織特異的なメチル化及び代謝状態の変化)

疫学研究では肥満や2型糖尿病のような現代病は慢性的に睡眠不足な人々に多く見られるということが報告されている。睡眠不足自体やこれによる概日リズムの乱れが骨格筋量の低下および脂肪細胞の増加などに影響しているだろうと言われている。大切なのはこうい…

“Hyperglycemia induces skeletal muscle atrophy via a WWP1/KLF15 axis(糖尿病が引き起こす筋肉量低下のメカニズム)

恐らく博士課程では骨格筋の機能を栄養的観点よりひも解くことになりそうなので、筋肉の機能や背景などを知る為にも、この分野についての研究はこまめにチェックしていきたい。 筋肉の減少による活動能力の低下はサルコペニアと呼ばれ健康障害の1つとして知…

Sleep modulates haematopoiesis and protects against atherosclerosis (睡眠は造血機能を調節し、動脈硬化を防ぐ)

NatureやCellといった一流誌に掲載される学術論文は膨大な実験データ量と意義深さをきちんと読みとくべきであることは重々承知だが、まだラボに所属していないためこれらの論文はレビューサイトやアブストのみでの紹介になることをご理解いただきたい。 睡眠…

夕方の激しい運動は睡眠の質低下には繋がらない、かつ空腹感を減らしてくれる(The Physiological Society)

夕方や夜の激しい運動は覚醒状態や体温上昇を引き起こし結果として睡眠の質を低下させるのであまりよろしくないとの助言を耳にしたことのある人は多いだろう。しかしながら近年はこの真相を確認する研究が行われ、ほとんどの研究結果として「夕方の激しい運…

2/28 Antioxidant Balance and Regulation in Tomato Genotypes of Different Color(トマトにおける抗酸化物質の研究)

ポリフェノールなど自然由来の化合部が持つ抗酸化機能が着目されてすでに月日がたった。しかしながらフェノール基を2個以上持てばポリフェノールであり、その構造や化合物の種類は多岐にわたる。例えばアントシアニンであればアントシアニジンと呼ばれる基盤…

世界一跳べる研究者を目指して

こんにちは。なべしょーこと渡辺祥と申します。昨年から1年間大手飲料メーカーに努めていましたが、3月で退社をし、4月より東京大学農学特定支援員として栄養学の研究に打ち込みます、2020年の4月から同博士課程に入学予定です。人生における大きなターニン…